花と酒と空海(2023年4月21日・奈良県番条町)

見つけてしまった。自称「ミニ遍路狂」の血が騒ぎそうなお遍路を! 奈良県に番条町というかつて栄えた環濠集落がある。南北に流れる佐保川の東にそって作られた集落で、中世に外敵からの自衛のために堀がめぐらされている。江戸時代末期から行われているのが、くだんの「番条のお大師さん」という風習 […]

インバウンドから新札へ(2023年4月・京都・清水寺など)

基本、桜のシーズンに観光寺院には行かない。ましてや人気の観光地などもっての他。しかも週末以降は雨予報ときている。泣く子も黙る京都観光のハイシーズンなのだ。 ただ事情があったのだ。友人の韓国人が訪ねてきた。何度も日本に来ている彼となら、花見の季節に知れた観光地には連れて行かない。だ […]

空海が見た風景(2023年3月・奈良・空海寺、東大寺、大安寺)

少し気になっていた。駅に置いていた奈良県の観光パンフである。特集の1つに「空海がいた奈良」みたいなものがあった。京都や高野山のイメージが強いけど、確かに奈良にもいたよな、空海さん。 そのなかに初めて知る「空海寺」というものがあった。そのものズバリなのだが、それだけに後にできたんだ […]

チクッと、鋭い話(2023年3月・香川県・海岸寺)

春と秋になると讃岐が呼んでいる。勝手にそう思っている。3月25日は多度津の海岸寺で春のミニ遍路が行われる日である。 あいにくの雨予報。しかし、弘法大師のご加護か、それともMさんのてるてる坊主のおかげか。曇り空で雨はまぬがれた。それゆえ参加者は昨年に比べて控えめだったか。 いいこと […]

車遍路雑記(2023年2月・香川の札所巡り)

2、3で限界。4つ廻った日には「自分を心底ほめてあげたい」と思う。1日における寺参りの数をいっている。それが半日で6カ寺である! VIPの四国八十八箇所巡りに同行。正直、ハイスピードの寺参りは初体験で慣れていない。ユングがイタリアの歴史あふれる町並みを見て、昏倒しかけたというそん […]

禅僧が語る歩き遍路(2023年2月・香川県・喝破道場)

高松にある座禅道場「喝破道場」をたずねた。2度目の訪問は雨の降る寒い日だった。JR鬼無(きなし)駅には、防寒チョッキを着た野田住職が待っておられた。 「電気自動車だけど、電気が切れそうだから、暖房は切らせてもらうね」 日産の電気自動車は、「中古をもらい受けた」と言うように年期が入 […]

密教と戒律の恐るべき融合(2022年10月・奈良・西大寺)

僧侶や在家信者が守るべき「戒」について知る重要な2つの寺院がある。いずれも奈良にある。 まずは唐招提寺。 759年に唐から来た鑑真が開いた。詳細は、井上靖が小説「天平の甍」で扱っている。その甍は現在も宝物館でみられる。地肌の土がけばだってはげている。困難な渡海で失明した鑑真のごと […]

ここにも地獄があった(2022年8月・石川県能登半島)

ヒッチハイクというのは、もう死語なのだろうか。 高校時代、青春18切符を利用して大阪から北陸まで旅をした。お金がないから道路で、手を挙げてヒッチハイク。止まったのは、当時人気の青いHondaの「シビック」。後部座席には、おもちゃのガチャガチャが大量に積んであった。営業の途中だった […]

ブータンのランキング(2022年10月・鳥取県八頭町)

鳥取でデイープに仕事されたこともあるYさんがふともらした。 「ブータンのプリンセスにも会ったんですよ」 プリンセスだけでもうらやましいが、仏教国ブータンとなれば、なおのこと羨望の極みである。なんでも毎年「やずブータン村まつり」なるものが鳥取県八頭町のお寺で開催されているという。 […]

虚しく往きて実ちて帰る~小豆島の夏至観音~(2022年6月)

「思い立ったが吉日」という。土曜に行こうか、日曜に行こうか思い悩んでいた。あまり悩まない質だが、こればかりは少し悩む事象ではある。瀬戸内海に浮かぶ小豆島にある島遍路に行く日のことだ。 1番札所に、夏至観音がある。正確にいうと現れる。夏至の前後10日ぐらいに、岩に当たる光の加減で、 […]

リベンジ遍路(2022年6月)

1カ月ぶりの京都は仁和寺である。「リベンジ遍路」なる言葉があるのかは知らぬが、捲土重来を期して、戻ってきた。先月は雨で寺の裏山で開催される「88カ所ウオーク」が中止であった。打って変わり、6月5日は気持ちいいぐらいの晴天である。山門には「本日開催」の朱文字が踊っている。 仁和寺の […]

ミニ遍路という誘惑~後編~(2022年4月)

晴れ男だったはずが、最近めっきり雨男である。しかも今日という日は、1時間ごとの天気予報で「曇り」をチェックしたというのに!家に戻り、濡れながら洗濯物を取り込む切なさよ。悔しくて、天気予報に関するサイトをのぞいた。天気予報の的中率は8割強という。へぇ、結構やるやん。スーパーコンピュ […]

ミニ遍路という誘惑~前編~(2022年4月)

えらいところに来てしもた…。岡山市北区大内田とある。市内なのでそこそこ都会だろうと高をくくっていた。カーナビが示す道路の先は、車がすれ違えないほどの小径が集落に伸びている。車では入れんやろ…。自らの運転技術も考慮して、手前の田んぼ脇に駐車。後にその決断が正しかったことを知る。小径 […]

入り口といえば入り口~阿波・淡路路~(2021年9月)

関西から淡路島に行くことになったので、ついでに橋を渡って四国の徳島まで足を伸ばすことにした。コロナが落ち着かない時期だったので、滋賀から京都まではJR。そこから高速バスに乗り換えた。京都駅は観光客の引くガラガラの音がけたたましかったインバウンド景気が嘘のようにガラガラ。平日の高速 […]

ゴジラは世界の窓口、若狭を目指す~福井紀行~(2021年8月)

タイトルはほっといてください。そのうちつじつまを合わせます。 福井県の西部にある小浜に行きたいとずっと思っていた。日本海に面したある意味田舎にあるのに、古刹がうじゃうじゃしている。せまいエリアに、明通寺、羽賀寺など美仏が密集する寺院銀座なのである。 ずっと思ってたら、行けばいいじ […]

浄土への回路~紀州路~(2021年5月)

山陰での寺巡りに味をしめ、進路をへき地へ取った。滋賀を振り出しに、紀伊半島を海沿いに一周しようという計画。車で約500kmになろうか。高速道路を乗り継いで、まずは御坊市手前にある由良町で降りた。 海岸に続く白い岩肌が美しく、「日本のエーゲ海」なんてPRしている。白崎海洋公園は自転 […]

コロナ禍の寺巡り~鳥取編(2021年5月)

なんだかんだで山陰3日目。いよいよ鳥取県である。水木しげるを育てた境港へと北上する。米子から北西に真っ直ぐの道路が続く。運転に退屈していると、米子鬼太郎空港が現れる。訪れなかったが、妖怪のステンドグラスなど粋な空港になっているという。これを迂回して境港市にある正福寺に向かう。がら […]

コロナ禍の寺巡り~島根編(2021年5月)

GWにコロナ禍の中での寺巡りを考えた。テレビでは「外出は控えてください」という呪詛の言葉が繰り返される。 でも寺ロスも限界に達した。電車を使わず、酒も飲まず、迷惑掛けずで行くから許しておくれ。 それではどこに向かおうか。大阪、京都はもってのほか。HPには県境をまたぐ移動は控えるよ […]

「慈眼」その後…(2019年8月・福島県会津美里町・龍興寺)

知ってしまったからには、行かずにはおられない。 風薫るすがすがしい福島・会津地方を車で走っておる。 会津若松城がある市街地から30分あまり。 会津美里町にある龍興寺を目指した。 どうしてこの地を選んだのか? 少し寂しげな町の中心に来るとわかる。 入り口に小ぶりのロータリーがある公 […]

くせになりそう、慈眼寺参り(2019年7月・京都市・慈眼寺など)

「あ、慈眼寺ですか? そこ知ってますよ」 お寺好きの方の目が輝いたのだが、 私が訪れた慈眼寺とその方がいうお寺は違っていた。 調べてわかったのだが、「慈眼」という名前がつくお寺は、日本全国にかなり多い。 大阪だと、野崎観音として知られる寺院が慈眼寺という。 ちなみに「慈眼」という […]

こんなところに、韓国の仏教! 後編(2019年7月・長野県安曇野市・金剛寺)

とんでもない韓国の仏を拝んだあとは、 とんでもない宿に泊まろう。   少しわかりにくいところにある。 レンタカーで同じところをぐるぐるまわる。 お寺に向かっているのだ。 いやほんと。金剛寺という宿坊である。   ようやくそれらしき細い小道を見つけると、 両サイ […]

こんなところに、韓国の仏教! 前編(2019年7月・長野県北安曇郡松川村・観松院)

はるばる来てしまった。 長野県は松本から北上すると、松川村というのどかな田舎町がある。 安曇野北部地方と言えば、少しイメージしやすいか。 わさびが有名ということだから、水も清涼なのであろう。 夏はいい。暑くて、蒸しっとする殺人的な関西とは対極の気候である。 みずみずしくて、カラッ […]

たけのこから達磨さん(2019年4月・京都府八幡市・円福寺)

テレビをなにげにつけると、「長岡京たけのこフェスタ」のことを放送していた。 「たけのこ食べたいなぁ」 旬の朝取れのたけのこは絶品のおいしさである。 だが…。 「朝からたくさんの人が並んでいたのですが、もういまは売り切れです。 あしたまた会場に並びますので、そのときをお楽しみに…」 […]

延命の仏は仏教由来ではない!?(2019年4月・奈良県五條市・常覺寺)

お寺を参るにも大義が必要だ。 つまり、なぜそのお寺に行くのか? 同行も日にちも決まっていたが、目的地が決められず、迷った。 そんなときはご縁にまかせるほかないが、難産で…。 決行前日に妻の仕事で京都に行ったので、東山にある青蓮門院の夜間拝観に足を運んだ。 観光寺院の夜 […]

闇に葬られた逸僧と寺(2019年3月・京都市・神泉苑など)

京都で二条城は知らない人はいないであろうが、そのすぐ南にある神泉苑はいかがか? 私もこれまで訪れたことはなかった。 二条城は毎度の外国人観光客でにぎわっているが、 一本筋を超えると、喧噪と無縁の場所となる。 地元民であろう妙齢のおばさまがのたのた歩く、生活感漂う京都となる。 さて […]

死ぬほどの体験・後編(2019年2月・岡山市・西大寺)

ともかく、出陣だ! 寒いと思いきや、さらしが腹に巻かれているので意外に寒くない。 しかも肩を組んで、叫びながらの野郎の大行進。 沿道の応援者とはハイテンションでハイタッチ。 異様な熱気を帯びて、寺の仁王門へと進んでいく。 「闘牛場みたいやぞ」 先輩が言っていた通りである。 門をく […]

死ぬほどの体験・前編(2019年2月・岡山市・西大寺)

まさに悪魔のささやきだった。 「絶対後悔せぇへんでぇ」 まるでマルチ商法の勧誘である。 しかも、そんな商売人の風体の御仁だから、なおさらそう聞こえてしまう。 またしても先輩の誘惑に乗ってしまった。 ときは2月16日の極寒。3人を乗せた軽自動車は、一路岡山へ向かった。 目的地は岡山 […]

ママ、まま、間々?(2019年2月・愛知県小牧市・間々観音)

まま観音というお寺が愛知県は小牧にある。 「間々観音」と書く。 あとで記すが、ここは「お乳」のお寺で知られているため、 母上の「ママ」かと思えば、それは違うらしい。 お寺の方によると、昔から崖や傾斜地のことを「まま」と呼び、古来より周辺は「間々」と言われていたという。 三重県の桑 […]

本当のところはわからない(2019年1月・兵庫県丹波市・達身寺)

いったい何曲入っているんだろう? 正月早々、先輩と丹波の古寺巡りなのだが、車のBGMは 決まって大音量のロケンロール! イギーポップ、クイーンから始まり、浅井健一など日本ものになると、ついて行けない。 でも、先輩のロック愛は道中、びんびんに伝わってくるのだけは確かだ。 &nbsp […]

守るべきものとは?(2018年11月・京都市左京区・圓通寺)

仕事で知り合った紳士との会食の席で…。 「迷ったら必ず行くようにしていたお寺があるんですよ」 特にお寺好きでもない人から、こんな話を聞くと、そそられる。 それが自分が行ったことのないお寺であるならなおさらである。 お寺は京都にあるが、地下鉄の北の最果て国際会館駅から、さらに20分 […]