岐阜県関に空前のブーム到来! ~刀と五郎丸~

地獄めぐりの季節ががやってきた!
 
息巻いたが、これを書いている今は、凍えるような寒さはとうの昔にぶっ飛んだ暑い夏なのだが…。
さておき、今年の地獄は、小生の都合で、年が明けてからと相成った。
東京から仏友・円飄を待ち受け、
まずは昨年お世話になった愛知県江南市の永正寺をお参り。
 
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そして、近くにあるひょうげた雰囲気がかわいい布袋大仏に手を合わす。
 
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さらに、藤まつりで有名な曼荼羅寺に集う猫たちに手を振る。
次なる目的地は、江南から北に進み、岐阜県の関というところ。
なんでまた?
何を隠そう、小生昨冬に昔ながらの伝統を残す奥三河の花祭りをみてから、伝統芸能のおもしろさにとりつかれ、正月に行われる奇抜な催事を物色していた。三河湾に浮かぶ神島のゲーター祭りとか、篠島の大名行列祭。篠島の大名行列など、ご神体のお渡りを見てはいけないという奇祭中の奇祭である。ただ、正月から島に渡るには、ちとハードルが高かった。
 
さらにネットでググっていると、ありました。
関鍛冶伝承館で行われる「古式日本刀鍛錬打初め式」である。
関という町は、鎌倉時代から刀鍛冶で有名なところで、昔ながらの刀の作り方を今に伝え、随時公開している。
 
侮っておった。
関という田舎町で行われる地元の祭りでしょ。
開始時間の朝10時に間に合うように行けば、なんとかなるやろ。
その考えは甘かった。
10メートル四方の刀鍛冶が行われる鍛錬場は、10分前には黒山の人だかり。
仕方ないので、手すりにつかまりながら、つま先立ちして、かろうじて様子がうかがえるという有様であった。神事なもんで、恭しく神官が来て、神様に祈りを捧げます。
背広姿の市長らも頭を下げます。
そして、黒い烏帽子に白装束の刀鍛冶が、先っぽだけオレンジ色の光を放つ鋼を鉄槌で、カンカン叩く。火花が飛び散り、「ウォー」とかいうものではない。
 
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率直な感想を述べると、派手さは全くない。
粛々と厳かに繰り広げられる神事に目を凝らすだけである。
 
でも、なぜそんな地味な行事に、こんなに人が集まるのか?
それが降って湧いた空前の〝関ブーム〟の秘密なのであった。
 
「女の子が最近よく来るのよ。なんでも刀に興味があるみたい。毎年、こんなに込むことはなかったよ」
 
地元のおばちゃんが証言する。
聞いたことがあるぞ。
「刀剣女子」というやつだ!
 
そこは円瓢が詳しかった。スマホのゲームで「刀剣乱舞」という刀剣を育成するオンラインゲームがある。刀剣に仮託された男子を育成するゲームで、キャラクターが実在や伝説の刀によるところがミソである。
新撰組の沖田総司の愛刀・加州清光や坂本龍馬が所有していたとされる陸奥守吉行といった伝説の刀が、個性的なキャラとして登場する。
すでに100万人を超えるユーザーがいるという。女性ユーザーが多いのが特徴で、刀剣に興味を持った女子が、今度は実際ちまたで展示している名刀を訪ねて歩くのが、ブームになっている。それこそが「刀剣女子」なのだ。
 
たかがゲームと言うなかれ。
彼女らの力は侮れない。
関の刀鍛冶も協力する幻の名刀・蛍丸を復元するプロジェクトが、クラウドファンディングにより資金が募られた。もちろん、結構なお金が必要となる。
だが、たった1日で2500万円を集め、最終的には約4500万円が集まったというのだ。彼女らの刀への愛情が原動力。刀剣女子、恐るべしである。
 
さらに、「日本刀 ~刀剣の世界~」という本格的な刀剣映画まで誕生した。
 
そんなゲームを飛び出した刀剣女子が、大挙して関に集ったというのだ。伝承館には、わたしにはよく分からない名刀も展示されている。
 
つまり彼女らは、都会からはるばる関に来て、その輝きに目を輝かすのである。
わたしが、営業の仕事で宮本武蔵の里にいったとき、岡山県の山奥にあった大原というまちは、大河ドラマが放送される前だったが、刀を展示していたであろう資料館(今はあるのかな?)は閑散としていた。今ごろはあの町も…。
 
仏友2人で人混みにもまれながら、少し幸せな気分になった。
ありがとう! 刀剣女子よ! 過疎の町を救ってくれて! そりゃ失礼か…。
 
実は、わたしは一度このまちに来たことがあるのだ。
長野の善光寺を参った後、自分の中で善光寺ブームが起こり、岐阜の善光寺や藤井寺の善光寺を訪ね、関の善光寺も訪ねた。
 
MONKの地獄巡りに寺は外せないこともあり、仏友と妻を案内した。以前は、うらぶれた商店街を抜け、人のいない本堂で、寺守さんの話をしばしうかがい、お堂の下の暗闇をたどる胎内めぐりをした。しかし、以前目にした光景ではなかった。
 
人、人、人! こちらはもっと人だらけである。
お笑い芸人・厚切りジェイソン風に言えば、
WHY! JAPANESE PEOPLE!
 
本堂に至るまで、結構な勾配で距離のある石段の参道がある。
ここに人がびっしり並んでいる。
誰か有名な人でも来ているのかしら?だが、不思議なことに、アンビリーバブルな人の列は、以前胎内めぐりを行った本堂には向かっていない。
本堂の前の大日堂に吸い込まれていく。
 
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はて、前来たときは、なにも思わなかったけど、なんかあったかな?大日堂を脇からのぞき、仏像を見て、ようやく合点した!「五郎丸か!」そう、ここの大日如来像の両手を組んだ印が、ワールドカップで時の人になったラグビー日本代表の五郎丸選手のフリーキックを蹴るときのルーティーンの手の形に酷似しているのである。
NHKでそのことが放映されると、にわかに参拝客が増えたという。
確かにそんな記事もネットで見たような。
地元の人に聞くと、関西を中心にした他県人が多いのだという。
大阪がラグビーのまちということも関係するのか
(東大阪市にはラグビー西の聖地・花園ラグビー場がある)。
 
感心はしたが、この行列に関西人が並ぶはずはなく、3人で脇から見える〝五郎丸〟にそっと手を合わせた。
 
考えてみれば、偶然に訪れた関だが、そこにはまさに神風が吹いていた。
刀剣女子と五郎丸がいなければ、この人の群れはどうであったか?
観光客が来ない…と嘆いていたであろう田舎町に降って湧いたゴールドラッシュだ。
問題は、これをいかに育てていくのか?
原資は手にしたのだから、発展のための投資が求められるであろう。
 
今後の関の動きには非情に興味が沸く。
 
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永正寺
 愛知県江南市高屋町中屋舗46
 名鉄犬山線・江南からタクシーで7分
 ☎0587-56-2584
関善光寺
 岐阜県関市西日吉町35
 長良川鉄道・関から徒歩3分
 ☎0575-22-2159

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