お寺との幸福な関係とは(2016年6月・愛知県・永正寺、正法寺)

愛知県江南市にある永正寺を訪ねました。

福島県に「笑い仏」を運んだ際にお世話になったお寺です。

(そのときの活動の模様はこちらに)

いつも忙しい中村副住職にお時間を取ってもらいました。

このお寺は、「攻める寺」です。

様々なイベントを仕掛けています。

昨今は、ヨガ教室などイベントを行う寺が増えてきました。

ですが、副住職のイベントは、仏教という軸からブレていません。

 

4月8日。

仏教的に最重要な日であることを知っている人は、多くはないと思う。

では、キリスト教では…。

ピンと来た人は鋭い。

そう、お釈迦様の誕生日です。お寺では、花祭りといって、お釈迦様が天と地を指さした誕生仏(生まれたときのお姿)に甘茶をかける行事を行います。

そこから一歩踏み出したのが、永正寺!

キリスト教にバレンタインデーがあるのなら、仏教で大事なこの日には、お互いお花を贈ろうじゃない。

名付けて「ヒーリング・フラワーデー」!

ちょっと西洋風ですが、受け入れやすそうなネーミングです。

今年は有志のお坊さんが集まり、名古屋の繁華街・栄で道行く人に花を渡しました。ベトナム戦争に反対するヒッピーがこんな感じだったですかね。

ただ、黒衣に剃髪姿というのはインパクトがある。

テレビ局も取り上げ、特集を組んでもらいました。

カメラに向かって、中村副住職が微笑んでいました。

「仏教の教えは、四苦八苦を取り除くもの。お釈迦様がお生まれになったのが4月8日というのもなにかの縁。この日だけは、怒らないで周りの人に花を贈ろう、優しくしよう、というのがぼくたちの願いです」

実に深い!

そんなことを日々の忙しい仏事の合間にやられている。

それはすごい労力です。

仏教やお寺というものが、「このままではヤバイ!」という危機感もあるからです。

私は一般人という立場ですが、別の視座からこの状況を見つめて、副住職と同じ結論に至りました。

『もっとお寺を社会のために役立てられないか?』

具体的な話は、省きますが、実に有意義なお話ができました。

(私にとってということです)

話は、飛びますが午前中は別のお寺にいました。

名古屋市内にある曹洞宗の尼僧さんが修行するお寺で、尼僧堂といいます。

正式には正法寺といいます。

ここで、こちらも「笑い仏」でお世話になった法永寺の尼僧さんが、住職になるための試験ともいうべき、首座法戦式(ほっせんしき)をつとめられたのです。

少しややこしいので、わたしらとの関係も含めて、説明します。

わたしらが知り合ったときには、道仙さんという庵主さんがおられたのですが、

ご高齢で今年冬に亡くなられました。生前から跡継ぎになられる方がいたのですが、この方もまだ修行のみだったわけです。

それが、晴れて住職になられるための法戦式にのぞんだわけです。

誰でもというわけにはいきません。

ご家族や檀家さん、そしてわれわれのようなお寺にお世話になった方が参加します。といっても、10人ぐらい。

折しも初夏の晴天の日でした。

当然、わたしは初めての参加でした。

老師というか、尼僧さんの師匠さんが、本尊に正対して置かれた高い台座に登っていきます。鐘が鳴り、ぴーんとした空気が張り詰めます。

次期庵主さんになる方が、師匠らから、矢継ぎ早に質問で攻め立てられます。

だが、これを「なんの」とやり返す。難解な文言が、立て板に水を通すように語られます。よう暗記しますね。お坊さんになるのも大変です。そんな圧迫面接のような問答を無事やり過ごすと、師匠らから『あっぱれ』となり、免許皆伝? となるわけです。

実にすがすがしく、背筋がピンとする行事でした。

前後しますが、お寺と檀家さんの理想はこうだなぁと思いました。

檀家離れが、昨今のお寺の問題です。

だから、零細企業でもある小さなお寺は経営がなりたたなくなる。

ゆえに、お墓や戒名に値段がついてしまう。

そんなお互いの不幸な関係に歯止めをかけるべく、お寺ががんばっている。

法要や行事を行うのは、そのためです。

お寺は住職のものではありません。

檀家のものでもあります。住職はそこに住む人。

宗教法人として、税金も優遇してもらっている。

だから、檀家さんには、お寺を使う権利がある。

むろん、一般の人にも。

先の中村副住職と話していたのは、このあたりのことです。

『もっとみなが寺をサポートしていこう!』

関係性ができれば、もっとお寺に興味が湧きます。

意外に大変なこともわかります。

当然、住職も人間です。

いずれ、交代もします。

そのときに、檀家は新たな住職を支えていかないといけません。

「たいそうな…」とお思いでしょうが、自然にそうなります。

そして、新住職が、檀家のお子さんやお孫さんの面倒を見る。

この循環がお寺を支えていくのだと思います。

法戦式が終わると、檀家さんが温かく尼僧さんにねぎらいの言葉をかけていました。いい光景です。

そんな感動的な場面もお寺にはあります。

永正寺

 愛知県江南市高屋町中屋舗46

 名鉄犬山線・江南からタクシーで7

 ☎0587-56-2584

正法寺(愛知専門尼僧堂)

 名古屋市千種区城山町1-80

   地下鉄東山線・覚王山から徒歩10

 ☎052-751-2671

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