季節が季節だけにお寺を訪れる人は暑そうじゃ。わしはもちろん仏じゃから、修行の成果で汗一つかかんぞ。境内を歩いていると、もう一つの夏を見つけたわい。
ほれ!
「鈴なり」なセミのぬけがら!
古来は空蝉(うつせみ)といっていたかのう。情緒あふれる響きじゃわい。
現実は夢…とは少し寂しくもなるが、見方を変えれば空蝉も面白い。
中国ではこれを食すと聞いておる。
日本でも漢方薬の一種として知られるのう。「消風散」にその成分が入っておるらしい。アトピーなどのかゆみに効くらしいぞ。詳しくは漢方薬局店で聞いてみるがよい。
そろそろ抜け殻の主らの大合唱が始まるかのう。
そして、ぼちぼち、わしの出発の時期も近づいてきた。
しばしの間はこの優雅な境内を散策しようと思う。
三重塔