台湾で聞いた妙なる響き(2014年5月21-24日・龍山寺など)

台湾に行ってきました。ちょっとこだわったところに泊まってきました。

 
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圓山大飯店といいます。市内から少し外れたところにあるんですけどね。見るからに格式がありそうでしょ。昔から台湾の各界要人が会議をここで開いたそうです。泊りたかった理由もあります。ここは、1901年には、神社でした。台湾神社といいます。日本の統治時代(1885―1945年)につくられたものです。鳥居もあった。ただ、当然のこと、戦後の蒋介石政権となり、跡形もなくなった。1952年につくられたホテルに入ると、宝塚歌劇の舞台のような大階段が見えます。この脚下に、神社のご神体があったとされます。つまり、統治された側が支配した側の御霊を踏みしだいていく。怒りというか、恨みというか、そんな怨念が込められたホテルです。
 
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今回の旅は、われわれ夫婦の友人が実に親切に、私の酔狂な趣味に辛抱強く、付き合ってくれて、実現したもの。謝謝です。5月は梅雨真っ盛りで、ほとんどの日が雨でした。そんな中、晴れ間をぬって、三峡老街に行きました。台北から少し南に下ったところにあります。老街というのは、日本統治時代につくられた、レトロ感が残っている町並みです。日本でいうなんとか横町かな。観光資源として積極活用されているそうです。
さて、三峡です。もちろん、お寺があるから来ました。長ったらしい名前ですが、三峡清水厳祖師廟といいます。ですが…。アジアのお寺に共通するのですが、上海でもマレーシアでも、日本のお寺が持つ深遠さが感じられないんですな。わびさびっていうか。日本と違い、何でも建物を新しくやり変えていく。コテコテにして、極彩色をそえる。立派ではあるが、宗教の厳かさを感じさせるものがないんですなぁ。
 
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ただ、参拝客は絶えません。これはお寺が今も生きている証左なのでしょう。そこは決定的に日本と違います。なぜでしょうか? お寺といいつつ、ここは道教系の寺院。現世利益追求のため、人々は訪れる。
 
「金持ちになりたと願って、何が悪いのさ」
 
口には出しませんが、そこは台湾はじめ、アジアの人はあっけらかんです。そのために寺で、熱心に祈りを捧げる。確かに、何も悪いことはしてませんが…。
ここのお寺の説明をしますと、柱に、ガウディーもビックリの細緻な彫り物がなされています。龍やら、亀やらが彫られています。でもこれって、どうやって彫るんだろ?
 
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台湾人の友人によると、龍が昇っていくさまを描き、縁起がいいという。全部にストーリーがある。この壮大な装飾の建造物の制作を指揮したのはを作ったのは、李樹梅というお方。彼は台湾の著名の芸術家で、27歳のときには、来日し、東京美術学校で学んだこともあるそうです。戦後、ここを訪れ、無事に帰国できたのは、こちらの神様のおかげと、荒廃していた廟の復興を思い至ったそうです。そういうことを必死にスマートフォンで調べてくれました。謝謝! 一通り、観光を終えると、雨が振ってきました。さあ、台北に戻ろう。
次の日は、市内の龍山寺に行ってきました。おそらく、台湾で一番有名なお寺です。人の混み具合も三峡の10倍はありそうです。
 
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寺のつくりも、三峡で見たものとほぼ同じです。装飾過多です。過剰です。でも、みんな熱心に祈っています。そこは変わらない。でも、何やら、赤い木片を投げて、喜んだり、ため息をついたり。何だろか?
 
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ルールがあるそうです。台湾の友人もあまり知らなかった。木片を2つ投げて、丸みを帯びた側と平らな側が出れば、くじを引いてよい。つまり、神様の了解を得る。だから、同じ側が2つ出ると、その日はくじを引けない、もしくはそんなことを神様にお願いするのはよくない、という意味にとらえるのだそうです。一種の娯楽とも言えないこともない。でも、みんな真剣。お、雨がやんで、少し陽が差してきた。
日本に帰って、龍山寺のあたりを舞台にした映画を観ました。『モンガに散る』。2010年に公開された映画です。この辺りは、モンガと呼ばれ、やくざが多かったそうです。そこで暮らす仲良し5人組が、成長してやくざになり、社会にもまれて、ついには自滅していくという話でした。韓国の釜山を舞台にした「友へ チング」みたいなものです。ホロ苦系の青春映画は、万国共通です。
もう1本台湾映画を観ました。こちらは語る価値もない。共通していることがありました。どちらもお寺が出てくる。日本の映画でお寺が出てくるなんてシーンは滅多にないもんね。「ラスト・サイムライ」では、姫路の円教寺が使われていたが、それぐらいです。お寺が日常生活に溶け込んでいるといえなくない。うらやましい~。
面白い場所が、お寺の裏道にある。龍山寺を出て、東の壁づたいに行くと、店の棚には土の付いた草が、無造作におかれています。一見いかがわしい漢方薬屋さんの集合体。そこで、「苦茶」とかかれた健康茶を飲んでみました。
 
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その名の通りの味。写真の隣に写っている苦さを抑えるラムネのようなものを一緒にほおばるのですが、これが激烈にマズイ。苦茶だけの方がどれだけよかったか。でも、体にいい気はしましたよ。妻は便通がよくなったとのことです。
味のない台湾ラーメンをすすって、腹ごしらえをしたら、私の目的地界隈
に着きました。ほれ。
 
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何の店だと思います? 仏具屋なのです。わかるわけないわな。龍山寺近くは、台湾が誇る仏具ストリートでもあった。さすがにそこは台湾の友人も初めてだったようで、私が仏具屋に狂喜乱舞していると、目を丸くしていました。この気持ちは、わからんわな。当然ながら、店内には仏像と仏壇が所狭しと並んでいます。こりゃいい!仏像は基本的には、中華スタイル。観音さんもありましたが、関羽さんやら、布袋さんやら、どこか道教の臭いがするものが多い。
そして、あるものを見つけて、ウインドウを開けてもらいました。アレです。仏壇には必ずあるのも。
「キーン」というか「チーン」というか、何とも心休まる音です。おばさんが、薄暗いケースの奥から出してきてくれました。おリンとそれをたたくリン棒です。でも、これホントに鳴るのかしら。そう疑った私をお許しください。おばさんがリン棒リンにを当てると、蒸し暑い店内に、清涼感が充満する妙なる音色が、響き渡った。
 
「買った!」
 
値段も聞かずに、意思表示したのだが、友人に「安くしてもらって」と後で付け加えた。そうしたら、リン棒はただで、おりんを置く台座も値引きしてくれたました。「ありがとう、おばさん」というと、「どういたしまして」と返っ
てきたのにはビックリ。聞けば、東京の上野にも商売で行くのだという。つまり、日本でも台湾製が売られているんだろうな。でもそんなことはどうでもいい。台湾まで来て買うから、価値があるのだ。
それから、我が家では、毎朝、チ~ンが日課になっているのだとさ。
 
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以上が、台湾寺訪問記でした。
 
清水廟祖師廟
 新北市三峡区常福街1号
 台湾鉄道・鶯歌下車で、そこからタクシーで約20分
龍山寺
 台北市広州街211号
 MRT龍山寺駅下車で、1番出口からすぐ

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