黄檗宗との繋がり、そして龍渓、隠元、豪商、天皇家…(2017年5月)

円瓢よ

おれら、とうとう黄檗の神にやられたな。
話せば長くなるが、詳細を記さねば、なんのことかわからないから、全部書く。
少々お付き合いあれ。

黄檗宗に興味を持ったきっかけは前に述べた。
先日、滋賀県日野の正明寺を訪ねた。
あいにくご住職は不在だったのだが、携帯番号が置かれていたので電話すると、実に丁寧な対応。

寺の説明をすると、そこに住持したのが龍渓禅師(りょうけいと呼び慣す)。
彼は隠元をしたい、自ら妙心寺の住持に関わらず、次の住持にすえようとし計画し、守旧派の猛烈な反対にあい、破門された。
それでも負けず、徳川将軍に隠元を会わせるなどして、宇治の地を後水尾法皇から土地を賜り、萬福寺創建とあいなった。
龍渓は話したかもしれないが、大阪で弟子が止めるにもかかわらず、大水が押し寄せる寺で禅定し、そのまま人柱になった。

「龍渓和尚のことを知りたい」

そう話すと、「23日に萬松院で龍渓さんの法要があるので、そこに行けばいろいろ教えてもらえるよ」と話していただいた。
前日に、萬松院に電話を入れると、「お待ちしてます」とこちらも丁寧なご対応。
そして、当日…。

ぶったまげた。
ただの見学と思っていたが、管長以下高僧らしき面々が並ぶなか、客人としてもてなされ、昼食後には住職から「長老方に紹介します」ときた。
その中に、龍渓が水禅定した大阪・九島院の住職もおられ、この方がまた熱い!

「みなさんがこうしてお集まりになられたのは、ご縁の力なので、2年後の龍渓禅師没後400年に彼の遺徳を世に知らしめようではありませんか!」

熱いだけでなく、よく研究されていた。

「またお寺に来て下さい」

そう言われたので、当然また行くつもりだ。

それと、そこでお会い明日女性もこれまた面白い。
こちらは、龍渓さんの出生の秘密を探り当てた在野の研究家。
そろばんの販売などをされていて、豪商・角倉家(高瀬川の掘削などを手がけた)が手がけた日本初のそろばん塾のことなどを研究されていた。
簡単に話せば、角倉了以の子どもが和算家・吉田光由をかわいがっておった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E7%94%B0%E5%85%89%E7%94%B1

彼女によれば、教科書に出てくる関孝和は吉田の書物を猛勉強して、和算家として知られるようになった。
だから、和算の祖は吉田で、しかもそれは角倉家が支援したというのである。
彼女がすごいのは、独力で吉田の埋もれていた墓を探り当てたこと。
それらしき墓の碑を掃除して、拓本をとり、レーザーで鮮明に文字まで解析した。
それが京都新聞にも掲載されている。普通そこまでやらんわ!

それが龍渓とどうつながるねん?
私もそう思っていたが、これが面白い。

角倉了以の家系図を調べると、娘に「吉田幻也女」とある。
彼女が嫁ぎ先で双子を産んだ。これが龍渓というのである。
おぬしも知っての通り、双子は昔、動物と同じ畜生腹といって忌避された。
それで隠し子にされたらしい。東寺に奉公に出され、出家したのではないかと。この記録が角倉家に残っている。
つまり、豪商の孫が龍渓だった。

ここからは私の空想だが、それであれば、龍渓が隠元を師事した理由もわかる。
角倉了以は東南アジア貿易で莫大な富を稼ぎ出した。
当然、明で高名な隠元のうわさも聞いていたのであろう。
そこに了以が目をつけ、隠元を来日させ、江戸幕府に近づけさせたというのは、大きく間違ってはいまい。
これが龍渓が隠元を盲目的にも師事した理由ではあるまいか。

隠元、豪商、天皇家とくれば、これで小説書けるで!
実際、そこまでの話が実証されたら、新聞でも扱うべきテーマだと思う。

彼女は本当に純粋な方で、「空石さんと知り合ったのも、光由の導きだと思うので、なんとか彼が日の目を見るようにしてほしい」と。
すでに、数年前から光由の顕彰会は、立ち上がっているが、当の角倉家があまり乗り気でないらしい。子孫が没落していることもあるらしい。
なにをいまさらなのであろう。
彼女は、嵐山の千光寺(角倉了以が建てた)の大悲閣にある仏像の修復も行っている。
どこにそんなお金があるのかわからんが…。

ともかく、黄檗の流れは、江戸の豪商にもつながっておる。
これはまだ歴史に刻まれていないときている。
あとは、わしらのセンスで、隠元、黄檗、龍渓をいい意味で世俗化してやれないか。

それと、別の依頼で滋賀・八日市のお屋敷(古美術の博物館)の復興もお願いされている。
それで調べていたのが、近江商人。このお屋敷のもとの商売は、朝鮮半島でのたばこ産業。
それは莫大な富を成したらしい。
そして、角倉家ももとはといえば、近江出身。
ここから意外なつながりが出てくれば、さらなる展開が生まれるかも。

まずは龍渓水禅定の寺に行き、見識を深め、黄檗プランのドラフトをつくるわ。
それをおぬしにより、研究助成の申請してもらう。
黄檗のふるさと、福建にも行かねばならんし、デカイ話になりそうやど!

空石