豊中にあったアメリカ(2017年4月・大阪府豊中市・瑞輪寺)

関西人以外は、「豊中」と言われても、口ポカンであろう。
関西国際空港ができた今となっては、影も薄くなったが、
国内線が発着する大阪空港がある。
伊丹空港ともいう。
だが、なぜか敷地にまたがってもいるのに豊中空港とは言わない。
ついでに言うと、池田市にもまたがる。
そんな空港の話をお寺で耳にした。 阪急宝塚線・岡町駅から徒歩圏内に瑞輪寺がある。
 
 桜が満開であった。
 
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周りには桜塚という地名もあり、昔から桜の名所であったのであろう。
近くにある原田神社は、7世紀創建とされる古刹で、瑞輪寺は原田神社の敷地内にあり、神宮寺の役割を果たしていたという。
大きなお寺ではないが、山門が変わっている。
以前は真言宗であった寺は、江戸時代に隠元が中国から伝えた黄檗宗に鞍替え。
それがこの中国風の山門の理由である。
恐れながら、法事から帰ったばかりのご住職に声をかけさせていただき、いろいろお話をうかがった。
 
 「この寺は、一休さんの子どもにご縁があるんですよ」
 
一休さんて、骸骨つけた杖で闊歩したりと、破天荒キャラで有名だけど、
天涯孤独じゃなかったんですか?
 
「禅宗では結婚はダメだったんですけどね」
 
つまり、結婚はダメだけど、SEXはいいと…。そういうことなんですね。
そんなこんなで、一休さんにも子どもがいたわけで、名を紹偵(しょうてい)という。
彼がこのお寺で亡くなったので、立派なお墓もある。
 
ついでに昔の豊中のことをうかがっていると、衝撃の事実が!
なんと、ここに米軍基地があったというんです。
 
「戦後すぐは、大阪空港が米軍管轄になっていて、蛍池にはアメリカ村がありましたね。だから昔からいわゆるアフリカ系アメリカ人をたくさん電車で見かけましたよ。当初は、基地に柵もなかったので、入り放題だったですよ」
 
今となっては想像に苦しむが、大阪空港は終戦後に、占領。
その状態が1958年まで続いたという。
さらにホームページで調べると、今の空港線は横文字のアメリカンなお店が並び、「テキサス大通り」と呼ばれていたという。
現在大阪大学刀根山寮の辺りは、白亜の住宅群が並び、「刀根山ハウス」と呼ばれ、アメリカの高級将校らに利用されていたとも。蛍池には米兵相手の売春宿もあったとか。
今は豊中といえば、文教地区。そんな欠片も見つけられない。
コテコテの大阪に、かつてアメリカが内在されていたという歴史は、今や誰も記憶にないであろう。
話は飛ぶが、映画「人間の証明」を観た。
松田優作が刑事役でいい味を出している。昔の映画は、社会の暗さがにじみ出ている。
米兵と日本人女性との間に生まれたいわゆるGIベイビーの話である。
そんな哀しい物語の1つや2つは、当然ここ豊中でもあったであろう。
 
ちなみにマリリン・モンローが、元メジャーリーガーのジョー・ディマジオと1954年2月に来日した。
ここ伊丹空港に立ち寄ったという。
当然、連合軍管轄時である。当時は金髪の女性なんか珍しかったから、さぞやびっくらこいたことであろう。 
 
ブラリと立ち寄った豊中で、深~い話を知ることができた。
 
 
●瑞輪寺
  大阪府豊中市中桜塚2丁目2―24
  阪急宝塚線・岡町から徒歩3分
  ☎06-6857-5192
  

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