深くもぐっていく寺(2017年2月・沖縄県金武町・観音寺)

那覇から高速を飛ばしても、1時間あまり。
キャンプ・ハンセンという米軍基地で名高い金武町(きんちょう)に、観音寺はある。
 
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一見普通の寺のように見える。
だが、境内の植生などながめると、南国の寺であることがわかってくる。
木造は本州と同じだが、屋根瓦など、一目見て沖縄独特の雰囲気が伝わってくる。
この赤い瓦、琉球瓦と呼ぶらしい。
 
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でも、これって昔からそうではなかったらしくて、首里城などで見かけるように、
王族のみに許されていたようで、一般的に使われるようになったのは明治時代に入ってからだとか。
 
さらによ~く目をこらすと、なにか違う。
机に置かれた米と水。
 
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実はこれ水でなく、酒なのである。
沖縄では、仏教より土着の宗教が尊ばれる土地柄。
お寺でも、お釈迦様をお祈りするというより、
お寺という宗教施設を借りて、祖先や土着の神様を祀るというスタイルが一般的になっている。
祈りの儀式に使われるのが、米や酒。でもって、この瓶は使用済の米や酒を入れておくためのものということ。
 
本土ではお目にかからないものである。なんとも南国情緒あふれる本堂でこうべを垂れた。
このお寺は真言宗のお寺で、戦国時代に日秀という僧が創建したという。
この日秀という方、実に興味深い。
高野山で修行し、補陀落渡海(外に出られないようにした船に乗せられ、熊野から極楽浄土を夢見て、海に流されていく宗教的自殺)を敢行。
だが、幸いなのか琉球に流れ着き、庵を結んだのがこの金武のあたり。
余談になるが、彼はそれから那覇あたりにも足を運び、護国寺の再興にも尽力したという。
その後は、薩摩に渡り、ここでも数カ寺を興したと伝わる。さて、観音寺である。長らく栄えたのであろうが、1934年に焼失。そして、再建される。
知っての通り、沖縄は地上戦で多くの建物が破壊された。多くの寺も失われた。
だが、幸いなことにここ金武は戦火を免れた。
パンフレットにはこう記されている。
 
「沖縄本島で戦前から残る唯一の寺」
 
これは歴史的にも価値のある仏教寺院である。
だが、この寺の隠された魅力は、地下にある。
ん? 地下?
なんと境内に鍾乳洞があるのだ。
ほれ。
 
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これこそが日秀が布教の中心としたとのことから、日秀洞とも呼ばれる。
深さ30メートル、長さ270メートルという。
ここに熊野三所権現を勧請したという。また洞窟内には、水天も祀られている。
当世風にいうと、パワースポットなのです。
ただ、わたくしは霊感はないのですが、沖縄のこの手の洞窟だけはどうしても後ずさりしてしまう。沖縄にはガマと呼ばれるこのような鍾乳洞が点在し、戦時中は防空壕として利用された。
不幸にも「鬼畜米兵に捕らわれるよりは…」と肉親同士が殺し合う集団自決の舞台になったガマもある。
 
こちらは違うのではあるが、ゾクゾクするので、わがままながら、寺守さんに同行をお願いした。
階段が組まれているが、ほぼ垂直に洞窟に入っていく。
何ともいえない聖地感。こりゃ宗教施設にもってこいだわな。
中は広い。
途中で行き止まりになっていたが、寺守さんが、親切にも道をあけてくれた。
 
「いつもは閉めているんですけど、いいですよ」
 
細い道を進んで、目の前に広がったのは、まさに異空間!
 
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「すごい!」
 
それしか言葉が浮かばない。
昔は泡盛の貯蔵庫として活用していたのだという。
石灰岩が地下水で浸食されたものと書けば、それまでだが、この神秘的な空間は、神の仕業としか思えない。
達磨大師は、少林寺近くの洞窟で9年間こもり、悟りを開いたとされる。
さもありなん。この光の入らない空間には、見えないパワーがこもっているに違いない。
ただ情けない話ながら、わたし1人ではこの洞窟に入って行けなかったであろう。
拙者は、臆病者でもある。
 
さて、金武観音に来たなら、ここは外してはいけない。
「ゴールドホール」というお店である。観音寺から徒歩10分。
ぼんさいカフェとある。
 
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想像を働かせても無駄である。
なぜなら、そんなちっぽけな想像をはるかに上回るカフェなのだから。
2Fに上がると、入場料を500円とられる。
食べ物が出てくるわけでもない。
平たく言えば、盆栽博物館なのである。
忍者屋敷のような建物の階段を上がったり、下がったり。
所狭しと置かれた木製細工や石像。
これだけあると、ありがたみが半減して、値段が高いのか安いのかわからない。
ただ、驚くのはここではない。
 
 
小部屋をパスしていくと、衝撃の部屋にたどり着く。
まあ、見て下され。
 
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なんと、部屋自体が鍾乳洞なのだ。
頭がクラクラしてくる。整理すると、ここはカフェなのである。
そこに、オーナーの趣味の盆栽が展示されている。
 
従業員に助け船を出してもらおう。
 
「もとは米兵相手のバーだったと聞いています」
 
この建物は、金武の米兵相手の社交街では、端っこに位置していたようで、あまり土地代はしなかったとのこと。だから店の裏手を見ると、こんな感じ。
 
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ある意味、絶景です。だが、さらなる掘り出し物が!
建物の地下に、鍾乳洞が眠っていたのである。
 
「現在(鍾乳洞は)は死んでいるんですけど、たまに昔を懐かしんだアメリカ人が、『よくここで鍾乳洞を見ながら飲んでいたよ』って訪れるんです」
 
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鍾乳洞がある寺に続き、鍾乳洞にあるカフェ。恐るべし金武…。
ここのオーナーは、タコスをご飯にのっけた「タコライス」で財を築いた富豪だったという。
最初は、バーとタコライスでもうけていたが、盆栽にはまり、今に至ったという。
もう初代オーナーは他界されている。
 
説明が必要であろう。金武は基地のまちである。
海兵隊の基地であるキャンプ・ハンセンが面積の約6割を占める。
兵隊姿の米兵が昼間に歩いているということはないが、基地である痕跡ははっきりとある。
 
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まちの掲示板には、「演習情報」とある。
キャンプ・ハンセンは、実弾演習が認められている基地なのである。
実弾演習の日時を記したペーパーが、張り出されている。
まちはそんな米兵相手にもうかった時代もあったという。
さきの従業員もそんな現実を冷静に受け止めている。
 
「基地はダメだとかいう人もいるけど、ここは基地でもっている。
医療費が高校卒業まで無料だったり、基地があるおけがで恩恵は受けているんですよ。
それがなくなったとき、なにで生活していくかを示してくれないと、簡単に基地反対とは言えませんよ」
 
そうだろうなぁ。格好のいいことを声高に言えるのは、本土の頭でっかちだけだろうなぁ。
鍾乳洞で、いろいろなことを考えさせられた。
頭を冷やしたい向きは、是非とも金武町へ!
 
 
観音寺
 沖縄県国頭郡金武町字金武222
 沖縄自動車道・金武ICから車で約10分
 ☎098-968-2411
 
ゴールドホールはこちらに詳細。

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